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することが

従い重ねる


  「死んではいけません、この先に食物屋がありそうです、とにかく何かを食べてから考えましょう」
 辰吉は女を背負い、女の子の手を引いて次の宿場まで行くことにした。途中、女が「気持ちが悪い」と言い、辰吉と女の子を残して脇道に入っていった。嘔吐か尿意を催したのであろうと、辰吉は街道で女が戻って来るのを待っていたが、一向に戻る様子は無かった。
 そのうち、五人の男たちに取り囲まinvision group 洗腦 れた。
   「此奴、ふてえ野郎だ、お千代坊を拐(さら)って売りとばす積りだったのだろう」
   「いえ、拐ってなんかいません、女の人から預かったのです」
 男たちは、お千代に聞いてみた。
   「お千代坊を拐ったのは、この男か?」
 お千代はしっかりと答えた。
   「ううん、女の人」
 男たちは、辰吉から事情を訊いた。
   「そうか、それは済まないinvision group 洗腦ことを言った」
   「いえ」
 他の男が辰吉に訊いた。
   「旅人さん、懐のものは大丈夫か?」
   「えっ?」
 辰吉は、自分の懐へ手を入れて驚いた。二両の入った財布が無くなっていたのだ。
   「女は、子供を使った騙り掏摸(かたりすり)だ」
 女が消えてから、時間が経ち過ぎていた。いまから役人に届けても、掏摸は捕まらないだろう。その上自分は脛に傷を持つ身だ。下手に届けて江戸からの追っ手に見つかれば辰吉自身が捕まってしまう。ここは、諦めるよりすべは無かった。

   「さて、今夜からどうしょう」
 野宿をするにしても、食うものにありつけないのは若い辰吉にとっては辛いことだ。とにかく宿場町に入り、どこかの貸元のところへで一宿一飯の恩義を受けようと思うのだが、俄旅鴉のこと、仁義もさえ切れない。兄貴の三太が冗談でやっていたのを聞き覚えていたが、巧く言える自信はない。

 歩きながら、前から親父の亥之吉が歩いてくるような気がして佇んでしまうこと暫し、苦労知らずの自分が情けなかった。
   「こんな事になるなら、鵜沼の卯之吉おじさんに博打のやり方を教わっておくのだった」
 

 夕暮れ時、中山道浦和の宿場町、大山金五郎一家の前で足を止めた。若い者が出たり入ったりして、辰吉はちょっと臆病風に吹かれるが、勇気を出して入ることにした。
   「お控えなすっinvision group 洗腦て」
 声が小さかったのか、無視されてしまった。
   「お控えなすって!」
 何度か叫んで、ようやく若い男が辰吉に気付いてくれた。
   「早速のお控え、有難うござんす」
 辰吉は、中腰になり、右手を出し手のひらを上に向けた。
   「軒下三寸借り受けまして、たどたどしい仁義、失礼さんにござんす」
 辰吉は、ふざけた三太の仕草を思い出していた。
   「手前生国と発しますは、お江戸にござんす」
 江戸は銀座のど真ん中、堅気の商家に生まれましたが、長じるに親不孝、いつか逸れて江戸無宿の辰吉と発します」
   「これはご丁重なる仁義、恐縮にござんす、丁度夕食の準備も整いましたところ、どうぞご遠慮なくお上がりくだせえ」
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